魔法をかけて、僕のシークレット・リリー



言いつつ背後の竹倉さんを振り返った時だった。


「……ははっ」


それまで黙り込んでいた草下さんが、突然笑い出す。彼はお腹を押さえて「サイコー」と目尻を拭った。


「お前、面白すぎな……! 眼鏡ふっ飛ばすって……ふはっ」

「えっ」


するとつられたように、耐えかねたように。木堀さんもくすくすと肩を揺らし始める。
恥ずかしさに縮こまっていると、こほん、と大きな咳払いが聞こえた。


「えー……大変不服ですが、まあ、いいでしょう。一連のマナー等はお二人とも問題ないようですので」


眼鏡がないせいか、目を細めたまま竹倉さんが告げる。


「しかし、体の使い方に関しては今後私の方からしっかりと指導させていただきます。よろしいですか?」

「それは、つまり……」


おずおずと竹倉さんに眼鏡を差し出しながら、私は彼の言葉の真意を確かめた。
彼は「ええ」と顎を引く。


「本日よりよろしくお願い致します。草下様、佐藤様」