魔法をかけて、僕のシークレット・リリー



テンションが上がって少々暴走してしまった。こういう類いの話になると我を忘れてしまって、どうもいけない。


「万人が自由に、ね。まあ理想論だけど、僕も同意かな」


浅く息を吐き出した彼は、「で」と軌道修正を図る。


「君はかなりメイクに興味があるみたいだけど、どう? モデルに興味はない?」

「そう、ですね……自分がメイクされるのはちょっと」


やんわり断ると、怪訝そうに首を傾げられた。

実のところ、メイクをされるのが物凄く嫌というわけではなくて、さすがにモデルとなるとメディアへの露出になるし、色々と支障が出るからだ。
支障その一、五宮家に本名及び素性がバレる。その二、両親に見られたらとんでもない叱責を食らうのが確実。
そこまでのリスクを負って引き受けるほど、お人好しでも何でもなかった。


「でも、ええと――お兄さんの展開するメンズコスメのブランドにはすごく興味があるといいますか、是非とも応援させていただきたいというか……」

「お兄さんって」


せっかく嘘ではないフォローをしたというのに、今度は呼び方がお気に召さなかったようだ。でもそれ以外、なんて呼べばいいのか分からない。


「君、僕のこと知らないの?」

「え? ……もしかして以前お会いしましたか?」


彼は眉間に皺を寄せると、「いや、もういいよ」と呆れたように呟き、私の質問に答えることなく部屋を出て行ってしまった。