魔法をかけて、僕のシークレット・リリー



三園さんを横目に、彼が問う。緊張して背筋が伸びた。


「は、はい。すみません、ここにあったものを勝手に使ってしまって……」

「ああ、いいんだよ。別にこれ試作品だしね。余ったやつだから」


そんなことより、と続けた彼は、私の顔をまじまじと見て告げる。


「君はメイクしないの? 今すっぴんだよね?」

「えっ、はい、まあ……」


なんだろう、この絶妙に失礼な感じは。
たじろぎながらも返すと、彼は少し考え込むように顎に手を当て、それから三園さんに言い渡した。


「杏、ちょっと外してくれない? 花城さんと話がしたい」

「へ!?」


初対面で一体何を話すことが!?
仕方ないですわね、と頬を膨らませる三園さんに、心の中で「いやいや待って」とひたすらに焦る。何で了承するの!? あなたしかこの人を止められないんですけど!?

胸中の葛藤虚しく、三園さんは「十分だけですわよ!」と言い残して出て行ってしまった。


「さて、単刀直入に言うとするかな。十分しかもらえないみたいだしね」


切り替えが早い相手に、愛想笑いをする余裕もない。
彼は今さっきまで三園さんが座っていた椅子にどかりと腰を下ろすと、長い足を組んで私を見上げた。


「君、モデルやらない?」