俯いて、ぎゅ、と目を閉じた。
眩しいのだ。蓮様はあまりにも綺麗で尊くて、儚い。

数秒経ってやっと顔を上げた時、未だこちらを見つめ続ける彼がいて、心臓がどうにかなりそうだった。


「……蓮様、あの」

「なに?」

「私、蓮様のお気に障ることをしてしまいましたか……? 最近、ずっと……その、」


避けられているような気がして。
消え入りそうな声で恐る恐る尋ねると、思い当たる節があったのか、蓮様は視線を逸らして頬杖をついた。


「ないよ、何も。……なんかむかつくだけ」

「えっ!?」


それは一大事なのでは!?
早急に改善する必要がありそうだ。慌てる私に、彼が明後日の方を向いたまま不満を垂れる。


「勝手に視界に入ってくるから、腹立つ。見たくて見てるわけじゃないのに」


そんなに存在を主張しているつもりはなかったのだけれど、お気に障ったらしい。なるべく彼の目に入らないようにすればいいんだろうか。どこまで実現可能かは未知数である。


「ええと、申し訳ございません……これからは蓮様の死角に入るよう気を付けますので」

「そういう問題じゃないんだけど」