一体どうしたのか、と恐る恐る彼の顔色を窺う。先程までの愛想笑いが嘘のように、蓮様の表情は硬い。
体調でも悪いのでは。心配になって、隣に座る彼に少し身を寄せた。
「蓮様。大丈夫ですか? ご気分優れませんか……?」
椿様に聞こえないよう、小声で尋ねる。
しかしこちらへ視線を向けた蓮様は、私の顔を凝視するだけだった。
「蓮様? あ、の――」
彼の顔が眼前に迫り、美の暴力に思わず目を瞑る。口元をそっと布で拭われた感覚がして、ゆっくりと瞼を持ち上げた。
「ソース、ついてる」
「えっ、あ……申し訳、ございません……」
耳元で聞こえた声が、近いせいかいつもより低く耳朶に染み込む。それなのに、目の前にあるのは可愛らしい女の子の顔で、脳内の処理が追いつかなかった。
椿様の社交辞令が比にならない程、頬が火照っている。
「二人、仲良いね」
何気なく、といったふうに添えられた椿様の言葉に、ますます参ってしまう。
蓮様と仲が良いだなんて恐れ多い。そもそも、主人と使用人なのにそんな言い回しは許されないのではないだろうか。
でも今はあくまで「友人」なわけであって、答えあぐねていると。
「仲は良いですよ」



