葵様がいなくなってしまった理由。分かってすっきりした、というよりも、それじゃあ半分私のせいじゃないだろうか、と気分が曇る。
「草下の気を引きたかったんでしょ。君のせいじゃない」
「蓮様……」
どうしよう、よく分からないけれど、泣きそうだ。
「君は、何が欲しいの」
「え?」
「誕生日プレゼント。何がいいの」
「とっ、とんでもない……! 蓮様からお祝いのお言葉を頂けただけで十分です、身に余る光栄でございます!」
最早、私に何か渡そうと思って下さっただけで有難い。
両手をぶんぶん振って主張する私に、蓮様は不服そうに零した。
「……さっき、あんまり嬉しそうじゃなかったくせに」
「え!? あ、いやそれは……驚いてしまいまして! 嬉しかったです、とっても! 本当に!」
「そこまで言われると嘘くさい」
「ええっ……!」
すっかり不貞腐れてしまった蓮様に、「本当ですよ!」と拳を握る。
「私は、蓮様とこうしてお話できて嬉しいです、幸せです!」
「あっそう」
「蓮様~~~~~~!」
あああ、せっかく蓮様が優しくして下さったのに!
どうやって挽回しよう、とあれこれ考えていると、突然蓮様が吹き出した。そのことにびっくりしすぎて、思考が止まる。
「は、……ほんと、犬みたい」



