魔法をかけて、僕のシークレット・リリー



彼の言葉を遮ったのはこれが初めてだ。存外意志の強い声色を出してしまって、自分でも驚いた。


「ここは、蓮様と葵様の秘密基地だそうです。誰にも言わないで下さい。葵様がこちらにいらしたことも」


蓮様に頼まれたわけではない。だけれど、同義だ。
私は嬉しかった。暗に「信用しているよ」と言われたようで。


「……分かった」


真剣な顔つきで顎を引いた草下さんに、私も頷き返す。

階段を上るところまでは二人だったけれど、私は小屋に入る手前で草下さんに全てを託すことにした。


「佐藤は?」

「私は外で待ってます。草下さんじゃないと、意味がないと思うので」


そう述べて、「お願いします」と頭を下げる。
草下さんが中へ入るのを見届け、ようやく胸を撫で下ろした。

急に疲労感が襲ってきて、川の近くに座り込む。きらきらと反射する星の移り変わりを眺めるのは、結構いい暇つぶしだった。
しかし、それはすぐに切り上げることになる。


「ありがとう」


他でもない、そんな言葉が突然聞こえたから。

弾かれたように顔を上げた先、視線は交わらない。蓮様はすぐに私の横に腰を下ろし、平然としていた。


「君でしょ、草下を呼んだの」