竹倉さんに呼ばれて室内に入ってきたのは、一人の女の子。メイド、なんだろうか。紺色のロングワンピースに白いエプロン、といった出で立ちだった。
「僭越ながら、私が務めさせていただきます」
ぺこりと頭を下げた彼女の声は、何とも可愛らしい。幼い顔立ちと小柄な体が印象的だ。
「お二人にはテーブルセッティングから行っていただきます。終わった段階で報告をお願い致します」
竹倉さんが壁際に立つ。先攻は私だった。
大丈夫、できるはず。だってうちも執事を雇っていたから。
パーティーなんて華やかな場には参加する気になれなかったけれど、どうしても家柄上、会食に同席しなければならない時があった。小さい頃から周りに使用人がいる環境で、常に彼らの動きを見て育ってきたのだ。
私はまず中央にお皿、それから周りにカトラリーを配置し、真っ直ぐに整える。次にグラスを二本。これは白ワインと赤ワイン用だ。最後にナプキンを立て、全体のバランスを見る。
「終わりました」
顔を上げたと同時、竹倉さんがこちらへやって来て、私がたった今セットしたテーブルをしげしげと観察した。
「ではサービスに移りましょう。木堀、座りなさい」
「はい」



