バカかよ、と心底愉快そうにお腹を抱える森田さん。
いつもなら文句の一つくらい差し向けるところだけれど、今日はやめておいた。
「ほら、ローソク消せって。とっとと食って、とっとと寝るぞ」
「はっ、はい!」
ケーキまで用意してくれていたみたいだ。
吹いて火を消すなんて、いつぶりだろう。どきどきしながらローソクを消し終われば、「おめでとう」とまた声が上がった。
「あの、本当にわざわざありがとうございます! 嬉しいです、とっても……」
こんなに大勢の人から一度にお祝いしてもらうのは、初めてのことだった。少しだけ緊張している。
「三日遅れで恐縮ですが、喜んでもらえて何よりです。二人の歓迎会もしておりませんでしたので、それも兼ねて」
竹倉さんがケーキを取り分け、私に視線を投げた。
私の誕生日は彼の言う通り、三日前だ。
楓からはその日、手作りのテディベアを貰った。彼女からは毎年何かしらのハンドメイド作品を貰うのだけれど、年々グレードアップしている。
「佐藤の誕生日なのに俺もケーキ食っていいんですか」
ラッキー、と屈託なく笑った草下さんが、竹倉さんからお皿を受け取る――かと思えば、時刻を確認して手を引いた。
「すみません、俺ちょっと葵様を見てきます」



