これはきっと、退治まで私の役目になるんだろうな。そう思いつつドアノブに手を掛ける。
「……あれ?」
多少の覚悟を決めてドアを開けたはいいものの、中は真っ暗だった。
何も見えない。困惑して、木堀さんに確認しようとしたその時。
「せーの!」
突然目の前が明るくなり、視界が開けた。瞳孔が明転に順応する前に、聞き馴染みのある歌が耳に入ってくる。
ハッピーバースデートゥーユー。そのフレーズを脳が拾うと同時、部屋の中を見渡す余裕ができた。
竹倉さん、森田さん、草下さんに始まり、使用人全員、だろうか。ここまで人口密度の高い空間に居合わせることはなかなかない。
「佐藤、おめでとう!」
「おめでとうございます」
拍手と温かい声に包まれて、ようやく息をしっかり吸える。
ここまできて、まさか誕生日をお祝いしてもらえるだなんて思ってもいなかった。
「あ、ありがとうございます……えっ、あの、カメムシは……?」
私がそう言うなり、どっと笑い声が上がる。
「カメムシなんているわけねえだろ、そんなボロい別荘御免だわ」
「ええっ、だって木堀さんがすごい必死に言うから……!」



