魔法をかけて、僕のシークレット・リリー



ケーキの上に乗っている時。飾りとして端に置いてある時。
葵様はいちごがお好きなのだろう。いつも、蓮様の分も貰っていた印象が強い。


「蓮様がいちごを食べているところ、あまり見たことがなかったので。食べて頂きたいと思っただけです」


だから、蓮様がいちごを特別好きだとは今の今まで知らなかった。これも新しい発見。


「……ふーん」


あ、また、ふーん。
顔を背けて、蓮様は目を伏せる。彼の耳をばれないようにそっと確認すると、少しだけ赤く色づいていた。
なるほど、今は照れているんだな、と便利な指標を見つけて頬が緩む。

蓮様はすぐに顔を上げて、何事もなかったかのように私へ視線を向けた。


「じゃあ、『ちょうだい』」

「――あ」


彼にピックを差し出す前に、薄い唇が、ぱくっといちごを咥える。その仕草が甘え下手な子供のようで、意図せずくすぐったい気持ちになった。


「蓮様……! ご自分でお持ちになって下さい!」


何だか急に恥ずかしい。
慌てて抗議すれば、蓮様は小首を傾げる。その動作もあざといから、控えて頂きたいのだけれど。


「我儘言えって言ったの、君でしょ」


これ、我儘って解釈でいいのかな。今度はこちらが首を傾げる番だった。