広げられたランチボックスを見渡して、彼の食べられそうなものはないか吟味する。フルーツなら、気分が優れなくても大丈夫だろうか。
いちごを一つピックに刺して、彼に笑いかけた。
「他の方に言いづらいのなら、私にお申し付け下さい。蓮様のお仕事は、我儘を仰ることですよ」
もっと頼って欲しい。素直に願望を述べて欲しい。そんなことを胸を張って言えるほど、私も立派ではないけれど。
せめて何か少しでも、彼の力になりたいと思う。
「どうして、僕の好きなもの分かったの」
蓮様が虚を突かれたように、大きく目を見開いた。今までにないほど、意外だ、という顔をしている。
「好きなもの……いちごのことですか?」
「君、いっつも言わなきゃ分からなかったでしょ。お茶の時も、こないだも」
「そ、その節は失礼致しました……」
もう覚えた。飲み物は冷たいものが好き。サンドイッチは卵一択。
でもそれ以外は、未だに全然分からない。彼について知っていることなんて、本当に、一握りの情報だけなのだ。
「葵様が、いつも蓮様におねだりしますよね。デザートにいちごがついていた時、『ちょうだい』と」



