魔法をかけて、僕のシークレット・リリー



激しく反省していると、無理やり口におにぎりを突っ込まれてしまう。
目を白黒させる私に、蓮様は「声大きい」と人差し指を立てた。


「別に大したことないから、騒がないで。時間経てば治るから」


一口かじり飲み込んでから、私は彼に合わせて声のボリュームを落とす。


「蓮様。もしかして、皆様にご心配をおかけするのでは……と、思っていますか?」


今日からの滞在を楽しみにしていたであろう葵様、それに手を焼く草下さん。竹倉さんと森田さんも、長時間の運転で疲れているだろう。
蓮様は、周りのことを気遣って言わなかったのではないだろうか。


「……言うほどのことじゃないと思っただけ。毎年のことだし。僕が我慢すればいい話」


以前、草下さんは言っていた。蓮様はポーカーフェイスだから、いまいち考えていることが分からない、と。
でも、蓮様のそれは、優しさで構成される時もあるのだといま分かった。


「お気持ちは分かります。でも、だめですよ。蓮様は我慢してはいけません」


何のために私がいるんですか。そう告げれば、彼の瞳が揺れた。


「蓮様が心地よく日々お過ごしになるためにお手伝いするのが、私の仕事です」