魔法をかけて、僕のシークレット・リリー



帰宅するのは、ゴールデンウィーク最終日の朝。つまり今日を含め、丸々四日間の滞在だ。

昼食は別荘からさほど遠くない、ひらけた場所でとることになった。芝生の上にレジャーシートを敷き、さながらピクニックである。


「わ~! すごいすごい! おにぎり、いっぱいある!」

「葵様、座って下さい。ほこり立っちゃいますからね」


用意された食事は、普段のようなコース料理ではない。
それこそピクニックらしく、つまみやすいウィンナーや玉子焼き、ミニトマトなど、比較的平凡なものが陳列していた。

葵様がおにぎりで騒ぐのも無理はない。お坊ちゃまが食べるものとは言い難いのだから。むしろリゾットの方が馴染みがあるだろう。


「蓮様! どうぞ!」


サンドイッチの時は卵が好きと仰っていた。玉子焼きを多めに、様々なおかずを盛り合わせて蓮様に手渡す。


「……いや、こんなにいらない」

「そう仰らずに! もりもり食べて下さい!」

「じゃあ君が食べなよ。僕、車酔いで気分悪い」

「えっ!?」


それは大変だ。一緒に乗っていたのに全く気が付けなかったこともそうだけれど、ここまで申告して下さらなかったことにもショックを受けた。


「そ、そうだったのですか……申し訳ございません。私、気付かずに――んぐっ」