後ろから葵様を捕まえようと走ってきた木堀さんが、ぜえはあと肩で息をしながら叫ぶ。葵様は彼女に目もくれず、こちらへ一直線だ。
草下さんのすらりと長い足に抱きつき、葵様がようやく立ち止まる。
「おー、元気いっぱい。車の中でぐっすり寝てましたもんね」
小さい頭をわしわしと撫でながら、草下さんが苦笑した。もっと撫でてと言わんばかりに目を細める葵様は、すっかり彼に甘えているようだ。
「クサカと遊ぶの! いっぱい!」
「はいはい。でも今は待って下さいね。危ないから車の中にいて下さい」
むう、と葵様が頬を膨らませる。その頬をつついたり軽くつねったりする草下さんに、葵様はきゃっきゃと喜んで、木堀さんの元へと走っていった。
「……なんか、草下さんすごいですねえ」
思わずそう零すと、草下さんは「え? 何が?」と首を傾げる。
「本当のお兄ちゃんみたいです。というか、葵様もすごく草下さんのこと信頼してるんだなあって、見てて分かったので」
私はまだまだ。むしろ蓮様に気を遣わせてしまうし、色々と情けない。
「うーん……まあ、正直俺も弟いるからっていうのはあると思う。それに、俺より佐藤の方が、蓮様には合ってる」



