それは、見てすぐに理解した。
 いくら頑張っても……こんな綺麗で品のある人に
勝てる自信なんて私にはなかった。
 するとその女性は、私を見て優雅に微笑んだ。

「はじめまして。私は、新堂早百合(かんどうさゆり)と言います。秀……」

「も、申し訳ありませんでした!!」

 私は、奥さんの自己紹介を聞く間もなく深く頭を下げた。
これ以上……耐えられなかった。
 居ても立っても居られずに逃げ出すように走り去った。

「夏希!?」

 遠くから社長の声がした。
でも、涙で振り返ることが出来なかった。
 こんなところで遭遇したくなかった。
奥さんにも会いたくなかったのに……。

 自分の惨めさに嫌気が差した。
しかし、その時だった。またもや社長の声がした。
 どうやら私を追いかけてきたようだった。
えっ?奥さんや樹里ちゃんが居るのに!?でも、追い付かれたくない。

「夏希。こら、何故逃げるのだ!?」

「こ、来ないで下さい。奥さんが居るのに」

 逃げるに決まっているでしょ……会いたくないのに。
これ以上、私を惨めな想いをさせないで。
 涙が溢れて止まらない。

「……違う」

何が……違うのよ!?

「すまない。アイツらは、俺の実の妹と姪っ子だ!!」

えっ……?
 あまりにも驚いて立ち止まった。実の妹で姪っ子?
だって、写真で飾っていたし。それに……。