なのに……。
 社長は、そんなのは無視して私に夕食の献立の事を聞いてきた。

 ちょっと。社長……こんな所で夕食の献立の話をしないで下さいよ!?
 しかも空気を読んで下さいよ!!

 視線が痛い。栗本さんからの視線が痛過ぎる。
さっき否定したばかりなのに……これだと台無しだ。

「夏希?」

「わ、分かりましたから。その話は、あちらで……」

 慌てて社長を社長室に連れて行った。社長室の中に入ると私は、
「あまり栗本さんの前でそういう事を言わないで下さい」と注意した。

「何でだ?いいではないか。どーせ。知らなくても
いずれバレるのだし、俺達は、愛し合っているのだから
 何なら熱いキスでもして分からすか?」

「やめて下さい。それ以上話をややこしくさせないで下さい!」

 社長が何かしたらさらに状況が悪化してしまう。
そんな事をされたら誤解どころか栗本さんに顔向けが出来なくなるわよ!!
 しかし社長は、前よりは、控えるようになったが
今度は、隠れて私にベタベタしてくるので困ってしまった。

「社長。この件なのですがよろしいでしようか?」

「うん?よく聞こえないな。
こっち来て詳しく説明をしてくれ」

 そう言っては、説明をする私のお尻を撫で回していた。
しかも隠れるようにやるから余計にたちが悪い。

 嫌がってやめさせようとすると
「あんまり騒ぐと栗本に気づかれちゃうぞ」と
クスッと笑いながら言ってきた。この男は……。

 呆れるやらムカつくやらで触っている社長の手をつねった。
説明をさっさと終わらせるとデスクに戻った。