「っていうかさー、今どき手紙で告白とか、やばくない?」

「……そう、かな」

「しかも文通とか、なんかストーカーっぽいし、きもすぎ!」


彼女は眉をひそめたままぶつぶつと言って、くるりと踵を返した。

私は慌ててその背中を追いかけながら、「ねえ、吉岡さん」と声をかける。


「これ……」


ちらりと振り向いた彼女に、封筒に戻した手紙を渡そうとする。

彼女に送られた手紙なのだから、返すのが当然だ。


でも、彼女は嫌そうに顔をしかめた。


「いらなーい! っていうか、そんなの持ってたら、なんか怨念的なやつで呪われちゃいそうだから、捨てといて」

「え……っ」

「じゃあねー」


戸惑う私をよそに、彼女は仲良しの女の子を見つけてそちらへと立ち去ってしまった。


私は封筒に目を落とす。

捨てる、なんて。

こんなに一生懸命丁寧に書かれた手紙を?


そんなことしてもいいのかな。

せっかく手紙を書いてくれたんだから、返事くらいしたほうが。


でも、これは私宛てじゃないし。


どうすればいいか分からないまま、私は封筒を胸に抱いて教室へ向かった。


始業時間まではまだ30分以上ある。

教室にはまだ数人しかいなかった。

吉岡さんは文化祭でダンスを披露するようで、早めに登校して仲間と練習をしているらしい。


私は自分の席へ向かった。

窓際の列の、後ろから二番目。


グラウンド越しに校門の桜の木を見ることができるこの席を、私は気に入っている。