泣きたい夜には…

院長は腕組みをして何かを考えていた。

やがて、フッと息を吐くと、

『キミの言いたいことはよくわかった。

だが、キミを諦めたくはないというのが本音だ。

成瀬くん、もう1週間考えてはもらえないだろうか?
それでダメなら私も潔く諦める。

来週の金曜日、夕方6時に病院に来て欲しい。もうこれで最後だから…』

来週の金曜日…

ひとみが帰国する日だ。

ひとみに会うのはしっかりけじめをつけてからだ。

「わかりました。来週の金曜日、必ずお伺い致します。」

俺は料亭を後にした。






今、俺が院長の娘と会ってしまったら、それこそ院長の思うツボ…

口にこそ出さなかったけど、向井先生だってこのパターンだったに違いない。

それだけは絶対回避したい。








1週間なんて考えるまでもない。

俺の気持ちはただひとつ、

この先もひとみと一緒にいたい…

それだけだった。