泣きたい夜には…

「院長、申し訳ございません。私には心に決めた女性がいます。彼女以外、考えられません。

今ここでお嬢さんとのお話をお断りをして、仕事の話を白紙に戻すと言うのでしたら、仕方がありません。
私のような者に目を掛けて下さって本当にありがとうございました。」

俺は立ち上がり、襖を開けた。

一礼して、出て行こうとすると、

『待ちなさい、私は公私混同するほど小さい男ではないぞ。』

院長は苦笑した。

『よく考えてごらん?
キミは彼女のために仕事のチャンスを潰してしまうのか?

それだけの価値が彼女にはあるのか?』

院長は俺に揺さぶりをかけてきたが、俺の気持ちは揺らぐことはなかった。

「はい。彼女は今、海外にいるので、2年会っていません。

離れてみて、彼女が大切な存在であるということがよくわかりました。

彼女が帰って来たら、自分の気持ちをきちんと伝えるつもりです。」