泣きたい夜には…

仕事が終わって、俺は桂川院長に食事に誘われた。

場所は、赤坂の料亭…

何だか政治家の密会みたいで、とても居心地が悪い。

『さぁ、遠慮なくやってくれ!』

桂川院長は機嫌良く酌をしてくれるけど、

早く返事をしなくては…という気持ちが先走って、

食事が喉を通らず、酒を飲んでも酔うことができなかった。

早く話して楽になろう…

俺は、深呼吸を2、3度繰り返すと、

「院長、先日の件ですが…」

緊張したけれど、何とか声が出た。

『決心してくれたのか?』

院長から期待が伝わってくる。

俺はもう一度息を調えると、

「どこまでご期待に沿うことができるか、正直のところ全く自信がありません。
でも、精一杯努力はするつもりでいます。こちらで勉強させてください。お願い致します。」