『病院を経営する立場としては、患者も大事だが、スタッフが働きやすい職場環境も提供しなければならないと思っている。』


俺は心の中で院長に、失礼ながら「かっこいい!」と叫んでいた。

緊張感を持ちつつ、俺は桂川院長のことを尊敬している。

『成瀬くん、キミは病院経営に興味はあるのかな?』

へっ!?

院長の突然の言葉に、
俺の思考回路は止まってしまった。

病院経営…って?

何で俺が…?

「確かに院長のように、患者にもスタッフにも優しい理想の病院作りをしていくということは素晴らしいことだとと思います。

でも、何故私なのでしょうか?」


院長はフッと笑うと、

『長年、病院の中だけにいると、いいことも悪いこともわからないことが多くなる。

キミのように、客観的な目で見ることが出来て、病院事情に詳しい人間がいてくれたら、この病院もより良く変わるのではないかと思ったんだよ。』


院長の巧みな話術に引き込まれそうになりながら、冷静になろうと息を調えた。

「そんな責任重大な仕事…私にできることなのでしょうか?」

院長はまっすぐ俺を見ると、

『私はキミならできると思う。これでも人を見る目は持っているつもりだ。

ストレートに言った方がいいのかな?
成瀬くん、キミ、うちの病院に来る気はないか?』


えぇぇぇぇ!!!

俺の心臓は激しく拍動を繰り返し、額や背中から汗が噴き出していた。