泣きたい夜には…

教授室に入り、坂田教授と打ち合わせをしていると、

コンコン!

『失礼します。』

入ってきたのはひとりの男性

そう…

さっき、アサクラさんに叩かれた男性医師だった。

彼の左頬はまだ赤い手形がくっきりと残っていた。

『向井先生、どうしたんだその顔は…?』

何も知らない坂田教授が尋ねると、

『暴れる患者を落ち着かせようとして、やられました。』

向井医師は頬をさすりながら爽やかな笑顔を向けた。

フン!よ~く言うよ!女に殴られたくせしてよ…

『そんな顔じゃ、香澄が心配するなぁ…』

か、香澄…って?

『そうそう、キミにはまだ話していなかったね。今度私の娘と向井先生が結婚することになったんだよ。めでたいだろ?』

なるほど、そういうことなのか…

「どうも、おめでとうございます。」

アサクラさんと向井は付き合っていたけれど、坂田教授に娘との結婚を薦められて、出世に目が眩んだ向井はアサクラさんを捨てて、教授の娘に走ったというわけか…

よくあるパターンだけど、ずいぶん汚ねぇマネしてくれるじゃねぇか!