泣きたい夜には…

先生の奥さんは笑って、

『入院中に彼の愛した人が浅倉先生だということはすぐわかりました。


浅倉先生にしてみれば、私なんて憎むべき存在なのに、必死になって娘…ひとみの命を救ってくれた。


娘には浅倉先生のような素敵な女性になってもらいたい…そんな思いをこめて先生のお名前をいただいたんですよ。』


穏やかに話す奥さんは、以前、向井先生が話していたように、本当に懐の大きな女性だと思った。


ひとみは奥さんの話に終始照れまくり、

『奥さん、ひとみちゃん…抱っこさせてもらってもいいですか?』


ひとみの願いを奥さんは快諾して、赤ちゃんをひとみに渡した。


『お、おい!浅倉!落とすなよ!』

向井先生は心配そうな顔でひとみに声をかけた。