泣きたい夜には…

ひとみも恐らく、向井先生がどんな気持ちで別れを告げたのか、わかっている…そんな気がした。


「お前、よくやったな…」
俺が言うと、ひとみは首を振って、

『まぁ、それが私の仕事ですからね…』

そう言いながら、ちょっと照れたような笑顔のひとみが眩しかった。


『慎吾、私…』

「お前…アメリカに行けよ…」

俺はひとみの言葉を遮って言った。


『えっ!?』

ひとみは驚いて大きく目を見開いた。

『慎吾は…私がいなくなってもいいの?

私がアメリカに行くということは、もう一緒にいられないってことなんだよ!』
ひとみはもう既に目に涙をいっぱいに溜めて、今にも泣き出しそうだった。


俺はひとみの両肩に手を置くと、

「俺だって、お前と一緒にいられないのは辛いさ!

でも、俺のために医者としての才能を潰して欲しくないんだよ!」