泣きたい夜には…

食事が終わって、一緒に後片付けをしていても、何を話したらいいのかわからず、洗い物をする水の音だけが聞こえた。

片付けが終わると、

『お疲れ様…』

ひとみは俺の前に缶ビールを置いた。

「お前は飲まないのか?」
ひとみは頷くと、

『もしかしたら、呼び出しが来るかもしれないから…それに…』

「それに…?」

言葉に詰まったひとみに俺は聞いた。

『慎吾に話があるの…』

「その前に質問!向井先生の赤ちゃん、本当はかなり危険だったんだろ?

何で自分は何もしなかったみたいな言い方をしたんだよ!」

ひとみはフッと笑って窓辺に目をやると、

『向井の赤ちゃん、何かははっきり言えないけれど、かなり危険な状態だったの。
必ず助けるって約束したから、とにかく無我夢中だった。

後でわかることなのかもしれないけれど、さっきこのことを言ってしまったら、何だか恩着せがましい感じがして…言えなかった。』