「向井先生、素になってきてませんか?」

この先生、本当はかなり面白い人なのかもしれない。

『ばかか、お前は!そんなことよりアイツをこのまま日本に留めておいていいと思うのか?』

先生はかなり熱くなってきた。

「アメリカに行く行かないは別として、ひとみからきちんと話を聞かないといけないですね。」

俺と先生はかなりの時間、ふたりで話をした。

先生はきっと、不安な気持ちを紛らわすために俺を残したのだろう。

俺は俺でそんなことも苦にならず、先生の話に付き合った。

そろそろ話すことがなくなってきた頃、

ガーーーーッ!

自動ドアが開いて、ひとみが出てきた。

俺の姿を見て、驚いた様子で、

『あれ?慎吾まだいたの?』

向井先生が堪らず聞いた。

『ひとみっ、香澄は?赤ん坊は?』

ひとみは笑顔で、

『奥さんは無事よ…赤ちゃんも小さいけど、元気な女の子が生まれたわ。先生、おめでとうございます。助けるも助けないも、私は何もすることなかったわ。』

そう言うと、ひとみは大きな伸びをした。