トゥルルル…

突然、携帯が鳴った。

課長からだ。

「はい、成瀬です…」

課長はなかなか俺が戻って来ないので、怒り心頭だった。

「申し訳…あっ…」

向井先生が俺から携帯を取り上げると、

『もしもし、消化器内科の向井です。今、成瀬さんに治験のデータ処理を手伝ってもらっているから、今日はそちらに戻るのが遅くなっても大丈夫ですかね?
はい、申し訳ないです。
よろしくお願いします。』
先生は電話を切ると、

『今日は直帰でいいってさ!だから私に付き合ってくれないか?』

先生は肩を竦めて笑っていた。

俺は先生と廊下の長椅子で、朗報を待った。

「先生は、ひとみのこと…どう思っているのですか?」

俺は思い切って聞いてみた。