タタタタ…

走って来る足音が次第に近づいて来た。

「ひとみ…」

『浅倉、お前…』

向井先生は困惑した様子でひとみを見つめた。

『産婦人科から7ヶ月の未熟児だから、小児科医のサポート要請があったの。』

そう言ってひとみが分娩室に入ろうとすると、

『お前、俺の子供…助ける自信はあるのか?』

向井先生はひとみに厳しい表情を向けた。

『先生、先生は私の指導医でしたよね?
ご自分が手塩にかけて育てた私を信じられないんですか?
私はこれでも未熟児のエキスパートです。
信じてください。
何があっても先生の赤ちゃん…必ず助けますから…』

ひとみの厳しい表情の中に自信のようなものを見たような気がした。

分娩室に入りかけたひとみが背中越しに、

『慎吾、今日は帰れないかもしれないから夕べのカレー、温めて食べてね。』

そう言うと、分娩室に入って行った。