『恐らくひとみはキミと離れたくないのだろう…』

えっ!?

俺だってひとみと離れたくない。

でも…

『キミの力が必要かもしれないな。』

向井先生がぽつりと呟いた。

俺?

俺なんかに何ができるというんだ。

『成瀬さん、キミにひとみのアメリカ行きをどう思っているのかを聞きたい。』

向井先生は明らかに俺を試そうとしている…

「わ、私は…」

ピリリリ…♪

俺が言いかけると、向井先生の携帯が鳴った。

『はい…あ、お義母さん、えっ!?香澄が!?わかりました。すぐに連れて来てください。』

電話に出た先生の顔から血の気が引いていた。

「先生…どうかなさいましたか?」

先生は頷くと、

『妻が…香澄が破水した。まだ7ヶ月だというのに…今、救急車でこちらに向かっている。』

先生はそう言うよりも早く、教授室を飛び出して行った。