泣きたい夜には…

先生のさっきまでのにこやかな表情が厳しいものに変わった。

「先生、それ…どういうことなんですか?」

あいつは医者になって良かったって言ってた。

あんなに上昇志向なひとみが、どうしてなんだ…

『キミは本当に何も聞いてないようだね。』

先生は俺をまっすぐ見て言った。

『ひとみは、教授推薦のアメリカ留学を断ったんだ。』

えっ!?

「そ、それ…本当なんですか?」

先生は頷くと、

『本当だ。もう少し、日本で勉強したいと言ったらしい。

私は考え直すように話しているけれど、言い出したら聞かなくて…』

苦笑する先生には、もうなす術がないとでも言いたげな顔をしていた。

俺は何を言ったら良いのかわからず、黙っていることしか出来なかった。