泣きたい夜には…

向井先生は俺を坂田教授の部屋に招き入れた。

『今週、教授は学会でカナダに行っているから大丈夫ですよ。』

うーん、娘婿ともなるとかなりやりたい放題なのだろうか…?

良く言えば、留守をしっかり守っているということになるのかもしれないが…。

『どうぞお掛けください。』

先生に促され、ソファーに座った。

「あの、私に何か…」

向井先生が俺を呼ぶなんて、絶対何かある。

先生は俺にお茶を差し出すと、

『ひとみ…いや、浅倉先生のことなんだけど…』

やっぱり…

「浅倉先生がどうしたんですか?」

俺はそ知らぬ顔をして聞いた。

すると、先生はプッと吹き出し、

『キミとひとみが付き合っていることは知っているよ。よくスーパーで見かけるし…』

へ!?

じゃあ、すべてお見通しということなんだな。

「先生、ひとみがどうしたというんですか?」

新ためて俺は向井先生に聞いた。