泣きたい夜には…

『ごめん、今はまだ言えない…』

ひとみはそう言うと、悲しげな表情を浮かべた。

何が原因でひとみを苦しい状態に追い込んでいるのだろうか…

「わかった…もう戻れ、まだ仕事あるんだろ?」

ひとみは頷いて椅子から立ち上がると、

『必ず話すから…だから私を信じて…』

そう言い残してラウンジを後にした。






それから1週間、ひとみから話はなく、相変わらず、何かに悩み、考え込んで、ため息を吐く…そんな毎日が続いた。

俺は、そんなひとみが心配だったけれど、無理矢理話を聞くという気にもなれず、ただ、ひとみを信じて待っていた。

そんなある日のこと、

俺が大学病院での仕事を終えて、会社に戻ろうとしていると、

『成瀬さん…』

背後から声を掛けられ、振り向いた。

「向井先生…」

向井先生はいつものように爽やかな笑みを浮かべて、

『ちょっとお話よろしいでしょうか?』