泣きたい夜には…

部屋の中に豪華な料理が次々と運ばれてきた。

『あれ?宿泊プランと違う料理が来ているような気がするんだけど…。

慎吾、こんなに豪華じゃないはずなのに…私間違えちゃったのかな?』

ひとみが動揺していると、

『失礼します。』

女将が入って来ると、正座をし、深々と頭を下げた。

『この度は私どもの大切なお客様を助けていただきましてありがとうございました。

おかげさまで、無事に回復されたそうです。

お客様方がいらっしゃらなかったら、当旅館の信頼を失うところでした。

本当にありがとうございました。

心ばかりのお礼ですが当旅館の最高級の料理をご用意させていただきましたので、是非ご堪能ください。』

女将が出て行った後、俺とひとみは顔を見合わせて、

「『いいのかな…?』」

思わずハモってしまった。

『私がしたことなんて、医師として当然のことをしたまでなのに…』

ひとみは困惑気味だったけれど、

「女将の感謝の気持ち…
ありがたくいただいておこう。」

と、いうわけで、

「『いっただっきま〜す!』」

俺とひとみは食べきれないくらいの豪華料理を十分堪能した。