8月上旬、俺とひとみは夏休みに入った。

『疲れたら運転代わるからね。』

そう言うひとみは昨日まで勤務で帰ってきたのが朝方近く…

帰ってきてから支度をしたので、ほとんど寝ていなかった。

「着いたら起こしてやるから…寝てていいぞ。」

早く向こうに着いた方がいいだろうから、箱根を越えて行くとするか。

ETCカードを挿入し、車は走り出した。

でも、ひとみは眠ることなく、窓の外の景色を見てははしゃぎ、見落としがちな高速の表示板をチェックしてくれたり、本当に楽しそうだった。

ガイドブックでチェックした伊豆高原のレストランでランチをし、美術館巡りをした。

最後に行ったテディーベアミュージアムでは

『かわいいっ!欲しいっ!』とひとみは子供のように大はしゃぎで館内を歩き回っていた。

周りにいた人達は唖然として見ていたけれど、誰もひとみが大学病院で医者をやっているなんて思わないだろう…。

ひと通り見終わってから、ガーデンテラスにあるティールームでお茶をした。

『私、バナナケーキのセットにする!』

ひとみの目が一段と輝き始めた。

本当にガキなんだからと思いながら、そんなところも可愛いと思ってしまう俺はひとみに対してかなり重症なのかもしれない。