泣きたい夜には…

高山さんは病院の近くにある、調剤薬局に勤務している。

職種は管理栄養士なのだが、自分の専門以外に、医薬品管理や医療事務といった薬局業務にも明るく、陰の薬局長と言わしめるほどのエース的存在。

美人で、おっとりとした性格だからなのか、

狙っている男は大学病院だけでも数知れず…

でも、彼女を落とした男はまだ現れていない…

かつては俺も憧れていたけれど、落とそうなどといった度胸は持ち合わせていなかった。

『成瀬さん、私、明日から今週いっぱいお休みしますから、何かあったら薬局長に伝えておいていただけますか?』

高山さんは笑顔で俺に言った。

でも、年度始めの忙しい時期に休暇だなんて…

高山さんらしくない。

「旅行にでも行かれるのですか?」

軽くジャブってみた。

『んー、まあそういうことになるかな?結婚式なんだ。』