ひとみは、研修医を終えて、小児科医として歩み始めた。

先週から、NICU(新生児集中治療室)で、赤ちゃん相手に頑張っているようだ。

『生まれたばかりなのに、母親と離ればなれじゃ可哀相だよね…』

なんて言いながら、涙を流したりする。

そう…

ひとみは泣き虫だ。

良くも悪くも、喜怒哀楽が激しい。

最初はどうしたらいいのかわからなくて戸惑うこともあったけど、最近はようやくそれにも慣れてきた。

本人に言わせると、

『私が泣くのは、慎吾の前だけだよ!』

だから俺はひとみに言った。

「泣きたい夜には俺の隣に来い!」

と…

本当にややこしい奴だと思うけど、

こいつだけは、何故か放っておくことができなかった。

「ほらっ、着いたぞ!」

車を駐車場に入れて、着いた所は…

『きゃー!前からここに来たかったんだー!』

地元では有名なスウィーツの店。

『私、チョコバナナワッフルとフォンダンショコラにする!』

メニューを見ながら、ひとみは目を輝かせて言った。