『成瀬さん…』

ひとみが耳元で囁いた瞬間、俺の中で何かが崩れていった。

俺の上にいたひとみを床に横たえ、驚く彼女を見つめると、

「傷ついても知らねぇよ!」

俺はひとみの頬に触れた。

ひとみは首を振って、穏やかな笑みを浮かべると、

『もうこれ以上傷つくことなんてないわ。

あなたが向井のこと、忘れさせてくれるなら…』

この言葉で俺の迷いは消えた。

『成瀬さん…』

「“慎吾”だ…」

ふたりの視線が絡み合い、次第に熱を帯びていった。

俺はひとみの唇にキスを落としていった。

そっと唇に触れるようなキスから次第に深く激しいものに変わっていった。

ひとみは俺の背中に腕を回し、唇を求めてきた。

俺はひとみのブラウスのボタンをひとつずつ外していった…

まさに、やけ酒に火がついた瞬間、

俺とひとみのふたりだけの時間が動き始めた…