泣きたい夜には…

彼女はペットボトルを開けて、ミネラルウォーターを一口飲むと、

『私が研修医を終えたら、私と向井、結婚しようって約束していたの。

でもあの人、私より出世を選んだ…

昼間、私に言ったの

「香澄のことは愛してはいない、本当に愛しているのはお前だけだ、だから結婚しても別れたくない」ですって…』

はぁぁぁぁ!!?

何て勝手な言い分…。

「で、何て言ったの?」

思わず身を乗り出して聞いてしまった。

パチン!

彼女の右手が俺の左頬を軽く叩くと、

『こういうこと…』

そう言うと、叩いた頬にそっと触れた。

彼女の手は、この前倒れた時のように優しくて、

またもや俺をドキドキさせた。