浅倉さんは、かなり飲んでいて酔っ払っているはずなのに、全く顔に出ていない…

「私、29ですよ。」

俺がそう言うと、

浅倉さんはふふっと笑って、

『ほらね、
だって私、26だもん…』

……ということは

『あともう少しで研修医卒業なんだ…なのにアイツは』

さっきまで、機嫌よく飲んでいた浅倉さんの目から大粒の涙がいくつも落ちていった。

アイツとは…恐らく向井先生のことなのだろう。

「浅倉さん、帰りましょう。部屋まで送りますから。」

といった次第で…

昼間、上杉教授に言われたことなんてすっかり忘れているようだ。


『さっ、飲み直そうね。』

浅倉さんは冷蔵庫から缶ビールを2つ持って、1つを俺の前に置いた。