泣きたい夜には…

車に乗り込むと、

「どこに行きたい?」

俺が聞くと、ひとみは、

『そうだなぁ、慎吾んち!』

まだ早いだろうが!

「そうじゃなくて…何が食べたい?」

『うーーーん…焼き鳥!日本酒飲みたい!!』

オッサンか、お前は…。

「了解!」

車を走らせて、ふと気がついた。

「ひとみの実家は桂川だったんだな…驚いたよ。でも何でお前は浅倉なんだ?」

俺の疑問にひとみは笑って、

『あぁ、浅倉は母方の姓よ。

ややこしいんだけど、父は実家の病院を継ぎながら婿養子に入ったの…

だから、病院にいる時は桂川を名乗っているというわけ。』

何ともややこしい事情だ…

『慎吾には帰国したら話すつもりだったけど、私が桂川の娘だということは、大学病院の人間も知らないの、浅倉姓のおかげでね。』

ひとみはそう言うと、肩を竦めて笑った。