ふっと表情を緩めた圭一はあたしの顔の横に右手だけ手をついたまま左手で器用にハンガーから外す。
その右腕にワンピースを掛けると空いた左手で次はスカートのボタンを外しにかかる。

「な、にしてんのよ!!」

圭一の奇怪な行動に慌てて止めようとしたけど、あたしの両手はあっさりと圭一の右手に捕まって、そのまま頭上で固定された。

「や~らし。誘ってるようにしか見えねぇ」

全開に開いたブラウスから覗く白。
ボタンも外されて、チャックもおろされたデニムのスカートから覗く白。
真っ赤になったあたしの顔と、面白そうに見る圭一の顔。

「その動き、や~らし」
「はぁ?!」

両手が使えないから必死であがいてみても圭一はびくともせんし、どうやらその動きまでもが誘ってるように見えるらしい。

キモイったらありゃしない…とは迂闊に言えん。
こうなった先、初めて知る裏の圭一がどんな行動に出るのか予想がつかんから下手に動いて逆上されても困る。

「変態」
「変態で結構」

開き直った圭一はスカートをおろし、あたしを下着とブラウス一枚にして、またニヤつく。

「やべ、絶景」
「なっ・・・?!」

いい加減ムカついて文句言ってやろうと思ったら近付いてくる顔。
そのまま唇が胸元に触れた。

「んっ…?!」

ちゅっ、と音をたてて軽くキスを落とした圭一はその場所を軽く舐めると、もう一度唇をくっつけて強く主張させるような赤いマークを付けた。

「俺のモノっていうシルシ」
「………?!?!」
「だって、こんなワンピース可愛すぎるじゃん」
「だからって!!」
「わざと見えるとこに付けたんだよ」
「!!!」

あたしから見て左側。
ちょうど隠れるか隠れないかの微妙なライン。
赤く濃く主張されたキスマーク。

“俺のモノっていうシルシ”

そう言った圭一は満足そうで、あたしの腰を抱えたまま引き寄せて抱きしめた、と思ったら器用にブラウスも脱がされて、暴れると首元にキスを落として抵抗させなくする。

あっという間に着替えさせられたあたしは不覚にも首すじにもうひとつ付けられた。

「なんのマーキングよ!」
「虫除け?」
「アホ!!!」

別にシルシなんか付けんくても寄ってくる男なんかおらんし、そんな物好きは圭一しかおらんって言おうと思ったのに、あんまり嬉しそうに微笑むから言う気も失せた。

そういうとこ、ズルイと思う。
今日の圭一には何をしても何を言うても勝てる気がせんから諦める。
だって今日は圭一の誕生日。

今日だけは許したろうと思う。

「・・・誕生日、おめでとう」

そう言うと、「ありがとう」と笑って今度は唇にキスを落としてくれた。

バースデーの夜はまだまだ終わらない。






→END.