「当たり前だろ」とギューッと抱きしめられる。
あたしも圭一を幸せにしてあげたい、そう思えた。

背後ではアヤちゃんとごっちゃんを筆頭に祝福の声。
拍手と、いっぱいの“おめでとう”が店内に響く。

マスターも笑顔で拍手してくれて、「おめでとう」って言うてくれた。

「なに、この公開プロポーズ!」
「マジやってくれるわ、このカップルー」

背中をバシバシ叩かれながら冷やかしを受ける圭一とは逆にお祝いの言葉をいっぱい貰ったあたしは今年一番嬉しい出来事になった。

「じゃあ、改めて飲み直しましょうか!!」

アヤちゃんの声で一度落ち着いた店内が再び盛り上がる。

「その前に、このバカップルに公開生チュー頂こうよぉー」

こんな時に限って酔っ払いが出てきて、いらんことを言う。
それにさらに盛り上がった周りは「キース!キース!」と全員でコールする。

止めてよ!と言うた所で酔っ払い達はヒートアップするだけで、アヤちゃんはごっちゃんの暴走を止めれんかったことで、あたしの顔を見て焦ってる。
圭一は珍しく無表情で止めることすらしようとせん。
助け舟のマスターですら手拍子して待ってる。

普段、協調性のカケラも無いくせに、こういう時に限って発揮する変な団結力が嫌い。

圭一の服を引っ張って、「止めてよ!」って言おうと顔を上げると、満面の笑みを浮かべた圭一がおって、反射的に逃げようとした。
でも、右手と後頭部を取られて引き寄せられる。

キャー!!とヒュー!!の歓声の中、ほんまに生チューを公開したあたし達。

恐るべし、元遊び人!!
こういうのに関して羞恥心が無いあたり、やっぱり要注意した方がええんかもしれん。
口唇が離れると圭一は放心状態のあたしの肩を抱き寄せ、みんなの方に体を向けた。

「この度、中川圭一と坂本真は結婚することになりました!お腹には赤ちゃんも多分います。真が綺麗になったからって狙おうとしてた奴、ざまあみろ!!まぁ、そういう事なんで、これからもよろしくお願いします」

再び拍手と歓声に包まれた店内はあたしと圭一を囲んで、次々とグラスを合わせてく。
最後にマスターがグラスを合わせてくれた。

「おめでとう。結婚はいいよー。奥さん愛してるし、結婚したのが奥さんでよかったと思ってるし。子供がいれば夫婦の絆も強くなるよ。それに旦那が圭ちゃんなら何も心配することないよ」

マスターに言われると妙に納得して、ちょっと軽くなった。

圭一はさっき引っ張られて中央に行ってしまったけど、あたしも圭一が一緒なら大丈夫やって思える。
不安なことは尽きんけど、圭一と二人なら頑張っていける気がする。

これから大変やろうけど、出来るかぎり二人で協力しあって話し合って、産まれてくる子供に素敵な環境を与えてあげられるように頑張ろうと思う。









24歳のクリスマス。
小さな窓から見えた外には白い雪が舞う。

降らんって言うてた天気予報は見事に外れて雪がちらついてる。


圭一からのクリスマスプレゼントはまだ貰ってないけど、神様からかけがえのないプレゼントをくれた。

大好きな仲間と大好きな人と大切な宝物に包まれて聖なる夜は終わりを告げてゆく。

















「圭一はいつから気付いてたん?」

「最近…?」

「俺も」

「アヤちゃんも?!」

「僕もそうかなー、と思ってたよ」

「マスターも?!」





…END…