まだ指輪を見つめたままの真を背後から抱きしめ、まだ自覚していない真のお腹に触れる。

「お腹は触るな」
「はいはい。真は指輪でも見てな」

なに?!と反抗する真を両腕で押さえ込んで、嫌がる真のお腹に触れる。
お前のママは鈍感だから、気付くまでもう少し待っててくれな?そう思いながら両手で俺の気持ちを送る。
俺の子供なんだから、きっと理解力のある子供に違いない。きっと「ママってば~」と言いながら笑ってくれるだろう。

「最近ちょっと太ったから触るな!」
「太ってないよ。細いままだけど」
「うるさいっ」
「怒る意味がわかんないから」

ぎゅうっと抱きしめた真の頬に自分の頬をくっつけてると愛おしさが溢れ出す。
今はまだ気付かないだろうけど、いつかその存在に気付いたら、真はどんな反応をするんだろう。

今日みたいに一瞬止まって考えるんだ。そして、泣くか?それとも、笑うかも。もしかしたら、不安で泣いてしまうかもしれない。
そうしたら、俺が隣にいて、今みたいに抱きしめてやろう。

俺は嬉しいと言ってやる。真を愛してることも、お腹の子も、きちんと養っていくことを話そう。それでも不安になるなら、何度でも抱きしめて、何度でも言葉にしてやる。真が納得するまで、真が安心出来るまで、何度も何度でも言葉にしてやろう。

「真の笑う顔が見たいなー」

俺の呟きに不思議そうな顔をした真が俺を覗き込む。

「違う、違う。わ・ら・う・の」

そういって片手で真の両頬を掴んで、唇を突き出すような変な顔にする。やめてよ!の声も一切無視。

「ほら、笑ってみ?」

眉間にシワを寄せた真の顔をふにふにと弄る。

「うん、その顔が一番可愛い」

諦めて笑った瞬間に手を離して、「なんなん?」と笑う真を見つめる。
その笑顔があれば、俺は何があっても乗り越えていける。真が隣にいてくれれば俺に怖いものなんてない。

笑顔のままの真を抱きしめて額にキスを落とす。
本当に愛おしいときは身体を繋がなくても、抱きしめることだけで満たされる。それを初めて実感した。

「ずっと俺だけのモノだからな」























プロポーズの返事を聞けたのは、その一ヵ月後。


そして、幸せの結晶を抱きしめることができたのは、




まだ先のお話。




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