「嫌いになるわけないでしょ。嫌いになるなら最初から付き合ったりしない」

こんな言葉も悪くて自己中で甘え知らずで素直じゃなくて、だけど、真っ直ぐで俺に嫌われると思う真が好きでしょうがない。
俺はいつだって真が心変わりしないか不安を抱えてる。同棲していたってそういう未来がないという保障はない。

「なんなら子作りでもする?」

最低な手段だけど、それなら真を繋げておける。もちろん冗談だったんだけど、真っ赤な顔した真に怒られた。

「冗談じゃん。また時期が来たら計画して作ろうね」

そう言うと、今度は胸を叩かれた。泣きながら真っ赤な顔で叩く手に力なんて無い。
笑う俺が腹立つのか、しまいにはそっぽ向いて一人で寝室に向かおうとする。
こんな時に一人で寝かせるわけないじゃん。

立ち上がる真を抱き上げてリビングの電気を消して寝室に向かう。腕の中では焦った真が何か言いながら暴れてるけど今日は絶対おろさない。

「今日は絶対離さねぇよ」

ベッドに寝かせて覆いかぶさる。そして、また深く口づける。
真っ赤になる真の横っ腹を撫でるとピクッと反応する。一緒に出た言葉はキスに溶けて消える。

「じゃあ、寝るぞ」

満足した俺は隣に寝転んで腕枕をして引き寄せた。唖然としてる真はされるがままで特に反応しない。
抱いてもいいけど、こんな日は互いの温もりを感じて眠りたい。

「物足りない?」

赤い顔で上目遣い。欲しいです、て言われてるみたい。

「違う!!」
「素直じゃないなぁ」

チュッと触れるだけのキスをしてギュッと抱きしめた。
今日はしない。懇願されたら、しちゃうかもしれないけど。

「圭一」
「ん?」

真が話す度に喉元に触れる息がくすぐったい。

「さっき言うてた言葉って、ほんま?」

見下ろした真は俺を見つめていて大きな瞳に俺が映ってる。可愛いなぁ、と零しそうになる。
あの時はこんな風に思うなんて考えもしなかった。

「さっきの言葉ってなに?」
「・・忘れたなら、別にいい」

ふて腐れた真は俺に背を向けて寝る体制に入った。
別に忘れたわけじゃない。てか、忘れるわけない。ただ、今はそのタイミングじゃないと思うだけ。

そういう大事なことはもっとちゃんとした日にちゃんとした形で伝えたい。
俺のくせにロマンチック野郎だけど、真にだって喜んでもらいたい。俺の気持ちよりも真が感じる気持ちの方が俺にとっては大切だから。

「真、愛してる」

俺は真を一生愛する自信がある。
背を向けた真に腕を伸ばして背後から包み込むように抱きしめる。

どんな形であれ、俺は真を抱きしめてやる。いや、抱きしめていたい。
もちろん、自分自身のために。一生手放したくない存在なんだ。

俺の言葉の数秒後、むくれた顔で俺の方に向き直った。移動しやすいように上げた腕を自分で腰に戻す真に笑いすら込み上げる。

腕枕にしていた腕を曲げて、くっつきそうなくらい近付くと素直にすり寄ってくる。機嫌は直ったらしい。

言葉なんて言った方が安心するのかもしれないけど、俺の心の真に対する愛情の何万分の一にもならない。
こうして傍で抱きしめてる方がよっぽど伝わると思うし、愛おしさも自然と増す。

真が不安になるならいつでも言ってあげる。だけど、それだけじゃ足りないならこうして抱きしめてあげる。
それが俺なりの愛し方で伝え方だ。