「そんなに喜んだ姿見せても“ふざけてる”って言ったのは許さないから」
「そんなこと言わんといてよ。てか、2週間前なのに何も教えてくれへんごっちゃんが悪いと思う」

結局はどっちもどっちだな、とアヤと顔を見合わせて苦笑する。

多分、後藤とアヤが結婚しても、俺たちの子供が産まれても、この二人は変わらないんだろう。
どっちがああだこうだって言っては笑いあうに違いない。

「この縫い目の粗さとか顔が似てなかったり、ちょっと不細工仕様がごっちゃんらしいね」
「それ貶してんでしょ」
「貶してないし!褒めてるし!」
「真ちゃん、今のは褒めてるようには聞こえなかったよ」
「俺も」
「え~褒めたのに~…」

今度は真がふて腐れて3人で苦笑する。

母親になっても真は真だ。
何も変わらないのが真らしい。
それを言えば、真はさらに拗ねるんだろう。

「てか、真はドレスどうすんの?」
「マタニティー用のドレス」
「そんなのあんの?」
「あんの」
「すごいね~。なんでもあるんだね~」

後藤は立ちっぱなしが疲れたのか、真の隣に一緒に座ってマスコットの色んな部分を指さして、ここはこうだったとか、これが難しかったと説明を始めた。

俺はアヤに視線を向けてキッチンへ移動し、作りかけてた昼食の作業を再開した。

「どう?心境は」
「特に。幼なじみだし両親も仲良いし、特に変わり映えしないな」
「式に関しては?」
「ん~、まだ二週間あるしな。直前になったら緊張したりすんのかも」

結婚式をしていない俺は結婚式を挙げる男の気持ちがわからない。

ほとんどの男がそうだと思うけど、“真と結婚する”って決めてたから結婚することに何の違和感も感じなかったし、その瞬間は人生で一番幸せな瞬間だと思えた。

でもそう思わず、結婚して自分の時間が無くなると思えば結婚が嫌になったり本当にこれでいいのかと思ったりするマリッジブルーを感じる男だっているって聞く。
だから、アヤもそうなったりしないのか聞こうと思ったけど、それはないらしい。

「毎日一緒にいたからな。アイツのおかげで」

まだ真と楽しそうに話す後藤を見て、幼なじみに向ける顔とは全く違う優しい表情。
色々めんどくさくて遠回りしすぎた二人だけど、終わりよければすべてよしってやつ。
結婚までするんだから後藤の粘り勝ちだ。

「ちょっとアヤちゃん聞いてよ!ごっちゃんがさー」
「ちょっと真!余計なこと言わないで!!」

真剣に焦る後藤に面白がって何かを暴露しようとする真、それを苦笑しながらも「なになに~?」と聞きに行くアヤ、それを見守る俺。
きっとこれからもこれは変わらないんだろう。


いつか。
いつか、アヤと後藤にも子供が出来て、子供同士で遊べるくらい大きな子供がいるような未来が来たら。

きっと家族ぐるみで旅行したり、今みたいにご飯会をしたり、お泊まりの回数だって増えるんだろう。
そして、それは現実になるんだろうし、今の真の密かな夢だ。

それをこの俺が叶えないわけにはいかない。
なんてったって真の夢なんだから、俺が叶えないわけがない。

圭ちゃんは真ちゃん一筋すぎて怖いよね、とアヤに言われたことがあるけど、そんなことどうでもいい。
真が幸せだと感じてくれることが俺にとっての幸せになる。






「なぁ、本物の招待状は?」
「あ、大丈夫!出さなくても強制参加だから」
「なんか色々ほんと申し訳ないわ」
「真、昼飯出来たけど食う?」
「食う!」










end.