零士にエスコートされ、私は零士所有の高級車に乗り込んだ。

「…どこに行くんですか?」

私の質問に零士は前を見据えたまま、フッと笑みを浮かべた。

「着くまでのお楽しみ」
「…えー、教えてくれてもいいじゃないですか」

そう言って膨れっ面をしてみるも、私をチラッと見た零士に頭をポンポンされ、あしらわれてしまった。

…間もなくして着いたところ。

高級ジュエリー店。

「…さぁ、行くぞ」
「…わ、私には場違いです」

そう言って拒否する私の腰に手を回し、零士は何食わぬ顔で入店してしまった。

零士の顔を見た店員は、何の迷いもなく、数点のネックレスを私たちの前に差し出した。

「この中から、好きなものを選べ満里奈」
「…こんな、高級なもの」

「…俺に恥をかかせるのか?」

店員をチラッと見た零士は私に言う。

…確かに拒否する事は、零士は恥をかくこと必至だ。

私はネックレスを見つめ、中でも一番宝石の少ない物を選んだ。

「…えっと、これが、いいです」
「わかった。それじゃあ、これを貰うよ。このまま付けていくから」

「ありがとうございます。それでは、箱だけお入れいたします」

そう言って微笑んだ店員は、零士からクレジットカードを受け取ると、一旦その場を離れた。

「…髪をあげて、付けるから」

零士の言った通りに髪を持ち上げると、それを付けてくれた。

「…キレイ」
「…良く似合うよ」

わたしたちは、顔を見合わせて笑う。

そこへ店員が箱の入った小さな紙袋を私に渡した。

「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしています」

店員に見送られ、外に出ると車に乗り込んだ。