「私は、七瀬様に勝つ為に来ました...。」
真田未央奈は、徳川七瀬を見て、
「そして、この戦乱の世を終わらせます。」
と言った。

「......。」
七瀬は、黙っていた。

七瀬の家臣達も、二人を黙って見ていた。

「この...戦乱の世は...私の...私の大切な人を...大切な思い出を...奪っていった!!」
未央奈は、最後は叫ぶように言った。

七瀬は、未央奈を見つめていた。

「純奈姉ちゃんや麻衣様は、戦の心労がたたって亡くなった...。
絵梨花様や沙友理様の命が奪われた...。
この戦乱の世は...失う事ばかりで、私達に何を残してくれたんですか?」
未央奈は、涙ぐんでいた。

「そうね...。
何も...残してくれてないね…。」
七瀬は、噛み締めるように言った。

「私はもう…誰も...何も...失いたくない!!」
未央奈は拳を握りしめた。

七瀬は、黙って頷いた。

「今、生きてる皆んなを救いたい...。
蓮加様や皆んなを...。」
未央奈は少し間を置いて、
「そして...七瀬様も...。」
と言った。

「え?」
七瀬は、未央奈を見た。

「七瀬様は素敵な方です...。」
未央奈は言った。

七瀬は、黙って首を横に振った。

「素敵過ぎて...皆んなが憧れて...その皆んなが『七瀬様の為に...』ってする事が...。」
未央奈は七瀬を見て、
「望んでいる結果とは、違う結果になってるんですよね?」
と訊いた。

「......。」
七瀬は黙っていた。

━━図星だった...。

「本当は、分かっているはずです...。
この大坂の陣そのものも、全く意味がない事を...。」
未央奈は言った。

「本当は、こんな事をしたくないのに...。
でも、自分が出て行かないと、収集がつかなくなってしまったんですよね?
妹の珠美様を守る為にも...。」
未央奈は少し間を置いて、
「私は、七瀬様も救いたい...。
もっと自由にしてあげたい…。
戦乱の世で苦しんでる七瀬様を...解き放ってあげたい…。
女子高生らしく...生きて欲しいんです...。」
と言った。

「み、未央奈...。」
七瀬の頬を涙が伝った。

━━その時、強い風が吹いた!!

そこにいた女生徒達は、慌ててスカートを押さえた。
七瀬も両手でスカートを押さえた。
両手でスカートを押さえているので、髪の毛はボサボサだった。

「スカートはどうにもしてあげられませんが...。」
未央奈は七瀬を見て、
「これで、髪の毛を留めますか?」
と言って、ポケットから何かを出した…。

━━バレッタだ。

「!?」
七瀬はハッとして、
「そ、それは...。」
と言った。

「はい、あの日...七瀬様が私にくれたバレッタです。」
と、未央奈は言った。

━━そう、あの風の強い日に、七瀬がバレッタをあげた少女は、未央奈だったのだ。

七瀬は、未央奈が髪型をショートカットにしていたので、気付かなかった。
未央奈は、七瀬からバレッタを貰ってから、豊臣蓮加達に会うまでの間に、ショートカットにしていたのだ。

「あの時の...中学生...。」
七瀬は呟くように言った。

「風で髪がボサボサになって困ってる、見ず知らずの私に、バレッタを差し出してくれる...優しい人...。
それが...本当の七瀬様なんですよね?」
と未央奈は言った。

「未央奈...。」
七瀬は言った。

「だから私は...七瀬様に勝ちます…。
麻衣様が...蓮加様が...そして、本当の七瀬様が...望んでいる、平和を取り戻します!!」
と、未央奈は言った。

「私も...徳川幕府を開いた手前、負ける訳にはいかないの...。
だから、本気でいくよ。」
と言って、七瀬は身構えて、
「一人で乗り込んで来るなんて、すごい子ね…。」
と言った。

「私、こんな性格だから、美彩姉ちゃんにも、いつも心配ばかりかけてるんです。」
と未央奈は七瀬を見て、
「この戦が終わったら...美彩姉ちゃんに謝ろう…。
馬鹿な妹でごめんねって...。」
と微笑した。

七瀬も微笑した。

━━その時!!

「お前まで、私を馬鹿にするのか!?」
と、叫ぶ声がした。

未央奈と七瀬は、声のした方を向いた。

━━徳川珠美が立っていた。

「?」
「?」
未央奈も七瀬も、意味が分からない様子。

「馬鹿な妹って...。」
珠美は未央奈をキッと睨むと、
「私を馬鹿にするのか...。」
と涙ぐんだ。

━━どうやら珠美は、未央奈が未央奈自身の事を『馬鹿な妹』と言ったのを、自分の事を言われたと勘違いしているようだ。

「ち、違いま...」
未央奈が言いかけた時、

「うるさーい!!」
と、珠美は叫んだ。

逆上していて、未央奈の言葉は届かなかった。
そして、

「真田未央奈を討てー!!」
と珠美は叫んだ!!