━━麻衣は、十万もの女子高生を動員して、四国地方も制圧した。

別に制圧したかった訳ではなく、ただ女子高生同士の争いを終わらせたかっただけである。

そして四国制圧の最中、麻衣は、朝廷の眞衣から、《従一位(じゅいちい)》の官位と《関白(かんぱく)》の令外官を授かった。

従一位は上から二番目の官位であるし、関白に関しては、この時代の女子高生の令外官で、最も高い役職である。

ちなみに、従一位の上に《正一位》の官位があるが、こちらはかなりレアで、生前に授かる者は少ない。
従一位の者が亡くなった時に、生前の活躍を讃えて贈られたりする。

━━この頃、シングルマザーだった麻衣の母親が再婚した為、苗字が羽柴から《豊臣(とよとみ)》に変わった。
《関白・豊臣麻衣》の誕生である。

━━関白の麻衣に対して、日本全国の殆どの女子高が服従を誓った。

麻衣本人は、別に全国の女子高生を服従させたい訳ではなく、ただ、“女子高生同士の争いをなくす為”、全国の女子高生達の協力が必要と感じたからだ。

あと服従を、誓っていないのは、
相模の北条飛鳥。
薩摩の島津怜奈。
陸奥の伊達蘭世。
そして意外にも、
信濃の真田純奈であった。

━━純奈は、別に抵抗したい訳ではなく、様子を見ていたのだ。

純奈は、徳川七瀬の存在が気になっていた。
徳川七瀬自身は争いを好まない為、服従の意思表示をしているのだが、七瀬は、他の女子高生達からの支持率が高く、豊臣政権の中で、七瀬派の学校も少なくない。

「可愛い。」
「綺麗。」
「こんな顔になりたい。」
など、全国各地に七瀬推しの女子高生達がいる。

きっかけは、いつかの本多花奈がブログに載せた、椅子に座ったまま寝ている七瀬の写真、

《寝顔も可愛い徳川七瀬!!》

の神レベルの可愛さだった。

さすがは、《寝顔ハンター花奈》といったところか...。

━━豊臣麻衣の力は凄い、佑美が本能寺の変で命を落とした後、一気に勢力を拡大し、従一位・関白にまでなった女子高生だ。

しかし徳川七瀬は、目立った勢力拡大はしていないものの、その実力は未知数だと、純奈は感じていたのだ。

麻衣は一度、全国の女子高生達を大坂女学園に集めて、今後について話そうと思い、

『女子高生各位
太陽3年7月1日午前10時
大坂女学園内の大ホールにお越し下さい。』

と、全国の女子高にメールを一斉送信した。

この呼び掛けに、七瀬を始めとする服従を誓った女子高生達は、大坂女学園へ向かった。
真田純奈・美彩姉妹も、取り敢えず大坂女学園へ行く事にした。
未央奈は中学生だったので、参加しなかった。

この呼び掛けに応えなかったのが、先程の純奈を除いた三人の大名、飛鳥・怜奈・蘭世だった。

飛鳥は何もしないで、麻衣に服従を誓う事が、神奈川県民としてのプライドが許さなかった。
それどころか、
『相模の北条は降伏はしない。
相模を手に入れたければ、力ずくで奪えばいい。
小田原にて待つ。』
と、徹底抗戦のメールを返信して来た。

蘭世は、飛鳥と同盟関係にあった為、様子を見ていたのだ。
状況によっては、すぐにでも麻衣の所へ行くつもりだ。

━━説明が遅れたが蘭世は、幼少の頃に患った病気のせいで、右眼を失明していて、眼帯をしている。

怜奈は、自分達の家臣が幸せならそれで良いと思っているので、面倒な事には関わりたくなかった。

服従とか、そんなのどうでも良かった。
それに、あと少しで九州を統一出来る。
統一して、九州から争いをなくしたい。
そちらの方が大切だった。

この三名抜きで、全国の大名達が、大坂女学園の大ホールに集結した。

大名達の前に麻衣が現れる。

彼女達は、背筋を正した。

「関白、豊臣の...」
麻衣は、一呼吸置いてから、
「麻衣である。」
と言った。

全員が頭を下げた。

この頃になると、麻衣は、存在するだけで影響を与えていた。

正に、《インフルエンサー》である...。