正式に、織田佑美の弟の春馬と、浅井琴子の交際が決定した。
これにより、織田と浅井は同盟関係になった。

しかし、その同盟も長くは続かなかった...。

━━浅井は、福井県若狭(わかさ)地区の朝倉絢音(あさくら・あやね)とも同盟を組んでいた。

朝倉とは、姉の代からの同盟関係である。
若狭地区金ヶ崎(かねがさき)女子高等学校二年、朝倉絢音。
黒髪のショートが似合う美少女だ。

その絢音の金ヶ崎女子高を、佑美が攻め落としたのだ。
この事に関して、琴子は悩んだ...。

佑美の味方をするか?
絢音の味方をするか?

絢音とは、お互いの姉の代からの、持ちつ持たれつの関係...。
琴子は、義理を貫く事にした...。

琴子は春馬を呼び出した。

「どうしたの?」
と、春馬が訊く。

「ごめんなさい、突然、呼び出して...。」
と、下を向く琴子...。

「うん、別にいいけど...。」
と、春馬は言った。

「申し訳ないけど、私と別れて下さい。」
と、琴子は頭を下げた。

「えっ!?」
春馬は驚いた。

「春馬君のお姉さん、佑美様が若狭地区を制圧し始めているのは、知ってるでしょ?」
と、琴子。

「うん。」
春馬は頷く。

「若狭の朝倉絢音様とは、姉の代からの付き合いなの...。」
琴子は更に、
「その絢音様が困っているなら、私は絢音様を助けたいの。
だから、私と別れてお姉様の所へ戻って下さい...。」
と続けた。

「......。」
春馬は、すこし考えてから、
「分かった。」
と答えた。

そして去って行った...。

その後ろ姿に向かって、
「春馬君...。」
と、琴子が呼びかけた。

「ん?」
春馬は、振り返った。
「ワガママ言って、ごめんなさい。」
と、琴子は頭を下げた。

「いいよ。」
と、春馬は微笑した。

「━━私が、朝倉に味方する事を、お姉様に...佑美様に教えてあげて...。」
琴子は薄ら涙を浮かべた。

春馬は黙って頷いた...。

━━岐阜女子高天守。
織田佑美の携帯に、春馬からメールが来た。
そのメールには、動画が添付されていた。

その動画とは、
《しっかりと口を結ばれた透明な袋の中に、アイスクリームが入っていて、そのアイスクリームが徐々に溶け出す》
という、変わった動画だった。

━━アイスクリームは、佑美の大好物の食べ物だ。
そのアイスクリームが、結ばれた袋の中で溶け出す...。

「!?」
佑美はハッとした。

そしてすぐに、
「麻衣!!玲香!!」
と二人を呼んだ。

すぐに、羽柴麻衣と明智玲香が天守に来た。
「琴子が...浅井が裏切った...。」
と佑美は言った。

佑美が攻め落した金ヶ崎女子校は、琴子のいる小谷女学院の先にある。

━━佑美をアイスクリームとすると、袋から出せない(出れない)状態だ。
これは琴子が裏切って、退路を塞がれた事を意味していたのだ。

織田佑美と浅井・朝倉連合軍の対立が始まろとしていた...。


━━足利理々杏は不安になっていた。
自分は、まだ高校一年生とはいえ、役職は将軍である。

織田佑美が色々と干渉してくる事に、段々と嫌気がさしてきていた...。
ちょっとした反抗期のようなものである。

━━佑美も悪気がある訳ではない。
将軍の理々杏に何かあっては、またこの世が混乱すると考えているからである。
しかし、理々杏には納得出来なかった...。

そのお互いの気持ちのすれ違いは、段々と溝を深めてしまった。

そして、理々杏は決心した...。

織田佑美の支配下にある学校以外の学校へと、メールを一斉送信した。

《織田佑美を討って下さい。
将軍・足利理々杏》

こうして、織田佑美包囲網の準備は進んでいった...。

織田佑美に再びピンチが訪れる...。